【ちょっとした空き時間に読める小説】 青ざめた時計

「ひ」の人

最近は近くの学校で行方不明者が出ているらしい。だけどこのクラスでは転校生の話題で持ちきりだ。

「この腕時計かっこいいでしょ!最近できたやつなんだ。」

そう言っているのは転校生のA君。最近ほかの中学から転校してきた子だ。周りにいた子はだんだん人がいなくなっていくと嘆いていたが、彼は非常に話しやすく、この学校にもすでに馴染んでいる。

「いいね、いいね!最近話題の肌色の時計だ。いいな、私もおしゃれな時計欲しいな。」

陽気なBちゃんがそう言ったのに続いて

「その腕時計って最近話題のすごく高いやつだよね。俺も買おうか迷ったわ。」

「俺も俺も!!」

「本物の肌のような手触りで長時間つけてても疲れないって噂だよね。」

すると、A君が

「なら俺の家に招待するよ。今日放課後俺の家に来てよ。」

こうして俺達は転校生のA君の家に行くことになった。

A君の家は転校してきてすぐだからか非常にきれいだった。どこもピカピカだ。

「わあ、いいな。すごい大きくて綺麗な家だね。両親は何をしている人なの?」

「実は腕時計はお父さんが作ったやつなんだ。いつも部屋にこもって作業してるから、実際に作ってるところは見たことないな。」

そう言ってA君は部屋の中を案内していく、

「ここがリビングで、ここが俺の部屋、で次にここが・・・

 ・・・それで最後にここがお父さんの作業場。ここは絶対に部屋に入らないように。作業の邪魔されるのがいやなんだって。」

A君の家はおしゃれな腕時計も最新のゲームもあり楽しく遊んでいた。

するとA君がトイレに行ったタイミングで、突然Bちゃんが提案してきた。

「腕時計作ってるところ見たいし、知らなかったふりしてお父さんの作業部屋に入らない?」

「いいね。入ってみよう。」

誰もいないリビングにA君が戻ってきた。

「あ~あ。また周りにいる人が減っちゃったよ。もっときつくお父さんの部屋に入らないように伝えればよかった。でも、みんな時計好きそうだったし時計になるのも本望かな?せめて身に着けてたくさんの人に自慢してあげるか。」

お父さんの部屋から皮を剥がされて苦しむ人達の声が響いた。

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