「あ」の人が実際に体験したエピソードを、物語風に紹介していきたいと思います。
私は地方の大学に通う女子大生。
小学生のときからあこがれだったガソリンスタンドのバイトを大学1年生のときに始めた。
私がアルバイトをしているガソリンスタンドはセルフではなく、スタッフが注文を受けてから、ガソリンを入れて、会計をするところまで行うフルサービスのガソリンスダンドだ。
バイトの時間はいつもバタバタしている。お客さんを少しでも待たせないように、少しでも効率的にお客さんが回るように、他のバイト仲間と連携しながら業務を行っている。
平日・週末関係なく混む時間が多いため、大学の友達にアルバイトの話をすると
「あの店いつもめっちゃ混んでるよね」とよく言われる。
時間帯によってはお店の敷地をはみ出して、行列ができることも毎日のようにある。
それでも、バイトのメンバーがよく、業務も楽しい。お客さんからお菓子や、肉まんを頂くなど、接客業ならではの経験もさせてもらっている。
そんな私のバイト先で最も忙しくなるのが、お正月を控えた年末の時期だ。
12月27日頃から早朝から夕方まで休みなくお客さんが並んでいる。
時間帯に関係なくお客さんの車がお店の敷地を常にはみ出して、行列ができている。全く休まらない。
しかも、車にガソリンを入れるお客さんだけでなく、灯油の注文も非常に多い。年明けに困らないように、年末のうちにガソリン、灯油を確保したい人たちが一気に押し寄せる。
これは、大学2年生の12月29日か30日できごとだったように思う。車で来店された女性のお客さん(60代くらい)に、話しかけられた。
「灯油って10リットルいくら?」と言われた。
正直当時の私は灯油10リットルの値段を知らなかった。
だいたいの灯油缶は18リットルが最も多く、次に20リットルのものが多い。
18リットルの値段は覚えていたが、10リットルの値段は覚えていなかった。
当時、18リットル1760円くらいだったので、
「10リットルの値段は分かりませんが、18リットルで1760円です。」と答えた。
すると、女性は「10リットルの値段は?」聞かれた。その返しに困惑した。大体の値段が分かればいいと思い。
「正確な値段は分かりませんが、1000円いなかないくらいの値段です。」と答えた。
女性は「実際いくらなの?」と言って詳しい値段を知りたがる。
正直電卓を使って計算をしてあげたかったが、そんなことをしてられないくらいお店が混雑している。
「900円台後半だと思います。詳しい値段を調べましょうか」と言ったら。
女性は「あ。なら大丈夫」とあれだけ長蛇の列に並んで来たのに、何も買わずに帰っていった。
何だったんだろうと思ったが、そうも言っていられず次のお客さんの接客に戻った。
そんな忙しい年末を乗り越え、年が明けた1月10日くらいの19時頃に、また女性に話しかけられた。
「あ、ほらこの前、灯油10リットルがいくらって私あなたに聞いたでしょ」と言われて、すぐに思い出した。「はい、そうでしたね」と言ったら、その女性は「ここのスタンプカードって1000円にならないと押してもらえないでしょ。私、腰が悪くて家が階段の上だから10リットルがいいの」と言われた。
その時、年末に女性がなぜ灯油10リットルの値段を知りたがっていたのかが分かった。私のバイト先ではスタンプ式のポイントカードがあって、1000円ごとに1つ押すというものだった。女性は18リットルの灯油を運ぶことができないからは10リットルの値段を知りたかった。でも、10リットルだとスタンプを押してもらえない。だから買わずに帰ったのだと。そっかスタンプを押してほしいのか、正直10リットルでも押していいのではと思ったのだが、その日は社員さんもいて1000円超えないと押せない雰囲気があったため、スタンプを押してもらえる方法として
「1000円分入れるのはどうですか」と提案した。ガソリンスタンドでは、定額や定量を設定できるため1000円を設定すればスタンプを押すことができると思った。
すると、女性はとても嬉しそうな顔になり私に行った。
「それいいわ!頭いいわね。お兄さん!」