【ちょっとした空き時間に読める小説】 教育

「ひ」の人

赤ちゃんの頃からずっと1人だった。ずっと孤児として過ごしていて、親というものを知らずに生きてきた。しかし、今回試作品としてお母さんロボットが支給された。孤児1人に対して1人のお母さんロボットを与えるというものだ。

「ちゃんと勉強してるの?」

『うるさい。あっち行って!』

「いい学校に行って、いい大人にならないと!私はあなたの為に言ってるの!」

『出てって!!』

「…ここにお菓子置いていくからね」

こんなお母さんならいないほうがマシだ!今までは私に口うるさく言ってくる人はいなかった。私が学校に行ってる間に勝手に部屋に入って掃除をする人もいなかった。ほんっっっとうに腹が立つ。
今まで耐えられているのは、人型AIには自爆機能があり、自爆命令を出せば爆破することを知っているからだ。これ以上何かされたら爆破できると思うと、ちょっとしたことなら許せる気になるのだ。それに、確かに腹が立つが自分のために動いてくれるので、少しずつ情が出てきた。

今も口うるさく言ってきたが、それも自分のために言ってくれているし、軽食まで持ってきてくれている。最近は意外といいかもって思えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

それから長い月日が過ぎた。

『これが最後の合格発表か。受かってるといいな。』

どの志望校も落ちてしまったが、お母さんは辛抱強く私を応援してくれた。受かってお母さんに喜んで欲しい。

結果は不合格だった。悔しい。お母さんにずっと応援してもらってたのに不甲斐ない結果しか出せなかった自分が情けない。落ちてしまったので、今から働かないといけない。

お母さんはショックだったのか固まってしまった。

『お母さん、ごめんね。こんな結果しか出せない娘で。今から仕事見つけて恩返しするから。ずっと応援してくれてありがとう!』

そう言っても反応しない。心配になって肩に手を置いてみると、

「触らないで!もうあなたには限界よ!これだけ手間暇かけたのに!!自爆して!」

『えっ?どうゆ』ボンッ

「最高難度の孤児ロボットの試作品として渡されたけど、なんて酷いロボットなのかしら。今すぐクレームいれてやるわ。」

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